腹診から治療を考える

最近、ご来院いただく患者さんで腹部(お腹)が、かなり堅い方が数人おられます。

堅いという感覚は、腹部の表面から少し手で圧をかけると、強い抵抗を感じる状態をさします。

当院の鍼灸治療においては、これが治療の指標となります。

特に肋骨の下縁からみぞおちにかけてに強い張りが診られる方は、ストレスや気疲れ、からだの疲れのたまっていると推測できます。からだは気が休まらない状態なのです。

そのため、寝ても疲れがとれない、食事を食べてもおいしく感じない、便秘もしくは下痢が続くなどの不定愁訴を感じるようになります。

腹部の張っていると気滞(気の滞り)、瘀血(血の滞り)、冷え、熱(からだに溜まった不必要な熱)などが、からだの健康を阻害しているとも判断できます。こういった時には気でも、血液でも、からだ中をうまく流れるように治療します。

そうすると治療後には、腹部の張りが無くなり、お腹全体がふっくらしてきます。

この様にして、鍼灸を施していくと不定愁訴の多い自律神経系の症状に著しい効果が見られます。

鍼灸治療においては、病気や症状の名前にとらわれずに、からだの状態から治療を考察していきます。そのため病院へ行っても、改善しきれない症状や、お薬でも効果が出ないものにも対処ができます。鍼を一本するごとにお腹を診ながら治療を進めることで、多くの症状に鍼灸治療を適応させることが可能となるのです。